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  あたたかく、やわらかい、魅力あふれる毛

 アルパカは、チャーミングな愛すべき動物であるだけでなく、その毛の魅力に、はまっている人もたくさんいます。
 羊は「シープ」、羊の毛製品のことは「ウール」と呼ばれますが、アルパカは、動物の種名そのものも、毛のことも、両方とも「アルパカ」と言われます。日本では、羊毛やカシミアほど知られていませんが、それは遠く離れた南米原産だったことや希少性から認知度が高まらなかっただけではないでしょうか。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどでは、羊の牧畜に加わって、アルパカも頭数をのばしていることもあり、アルパカのセーターなどの衣料品もポピュラーになってきています。
 アンデス地方の3000〜5000メートルの高地という朝晩の気温差が激しい過酷な自然環境のなか、暑い直射日光や凍てつく寒さや強風にも負けない毛で、からだを守っているアルパカ。だからこそ、アルパカの毛には、素晴らしい特性がいろいろあります。
 まず、保温性。ウールやカシミアよりも暖かいといわれます。
 そして柔軟性。12〜28ミクロンくらい、つまり100分の2〜100分の3ミリほどの直径しかない細い毛で、柔らかく、手触りもなめらか。絹のような肌ざわりと光沢があります。とくにスペイン語で「クリア」と呼ばれる、生後0〜6ヵ月のベビーアルパカの毛はさらに細く柔らかくなめらかで、より高級です。
 またアルパカの毛は、ウールより軽いのも特長。寒がりだけど、重たいセーターだと肩が凝る、というような人には、まさに夢のような毛といえます。しかも長い毛を利用した衣料は丈夫で耐久性もよいです。ウールのような毛玉もほとんどできませんし、しわにもなりにくいと、よいことづくめです。
 でも正直に言うと、デメリットもあります。まず日本ではまだ希少性が高いので、高価。またウールより伸縮性が乏しいので、セーターを編むときに目をそろえるのが少々難しいです(コットンよりは伸びます)。さらに虫にも好まれやすい(!?)らしく、虫食いになりやすいので、シーズンオフのときは防虫剤をきちんと入れて保管しましょう。

●●●毛刈りは、アルパカも人も重労働 ●●●

 さまざまな特長のあるアルパカの毛ですが、性質だけでなく、ほかの獣毛に比べて、毛の色のバリエーションが豊富なのも魅力。国際的なアルパカの団体によると、その色数は22色。ホワイト、フォーン、キャラメル、チョコレート、スチールグレイ、ローズグレイ……ブラックまで、すべての毛色にちゃんと名前が付いています。アルパカの祖先である野生のグアナコやビクーニャは、茶色か栗色といった茶系なのに、アルパカはなぜ白系、茶系、グレイ系、黒系まで、豊富な毛色が揃ったのか……品種改良の過程でそうなったのでしょうが、自然のミラクルです。
 ただ、それだけに毛刈りや刈ったあとの毛の識別は、白1色の羊に比べると大変。なにしろ真っ白い毛の中に、黒い毛が1本でも混じってしまうと、商品価値が下がってしまいます。そのため欧米諸国では、白が好まれる傾向にあります。白なら染色も可能というのも好都合。一方、南米の現地では、昔から黒やアルパカらしい風合いのあるグレイやベージュが好まれるようです。
毛刈りの経過写真 毛刈りは、その日刈るグループのうち、まず白い毛の個体からやりはじめ、だんだん毛のトーンが濃くなるよう選び、最後に黒い個体をやります。その方が混じった毛を発見しやすいからです。なかには、全身単色ではなく、体は茶色や黒なのに、顔や首などに白斑が混じっている「ミックス」タイプもいます。こういう個体は毛の分別が大変なので、完全な単色ボディのアルパカが価値が高いとされています。
 品質管理は色だけではありません。体の部位によって、柔らかさや美しさが違います。いちばん品質がよいランク1は、サドル(背)の毛。大きな1枚の毛皮のように(実際には皮膚は剥いでいませんが)つながるものが最も価値が高いです。ランク2は、首の毛。ランク3は、足とおなかの部分の毛です。
 さらに、同じ部位でも、個体によって、柔らかい毛の子もいれば、硬めの毛の子もいて、“super fine”“fine”“medium”“strong”と、4ランクに分けられます。
 このように、毛の色や品質を選別するのは、熟練が必要です。アルパカ牧場では、年に1回初夏の頃に、オーストラリアから経験豊かなアルパカの専門家を招聘し、毛刈りをしてもらっています。
 基本的に年に一度は毛刈りをしないと、毛が伸び続け、夏は暑くて大変なので、アルパカの健康に支障が出る心配もあります。ただし、毛刈りのときは、バリカンが大きな音を立てていますし、ただでさえ臆病なアルパカですから、押さえつけられて毛を刈られるときは生きた心地がしないようで、悲痛な叫び声をあげたりして(決して傷つけられてはいないのですが)見るのも痛々しい感じがします。でも、これが紡績のために飼われている家畜の宿命なのかもしれません。アルパカが苦労した分、アルパカがくれた天然の恵みを、私たちは、有効に大切に利用させてもらわないといけません。

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